覆面作家企画5〜おまけ〜
「シキ、若しくは渇いた刑場」に隠された鍵について
臣下に優しい言葉を掛けた国王(皇太子)がなぜ清晶の死刑執行を命じたか
国王になって権力を握ったことで変わってしまったのか。そもそも優しい一面と残酷な一面を共に持っていた人だったのか。
あるいは……国王はその国において実権を握ってはいない、か。「王は君臨すれども統治せず」なのかもしれないし、長らく病に臥せっている国王に代わって事実上の決定をしている誰かがいるのかもしれないし。
国に収めるべき囚人の所持品を懐に入れ、賭博に興じる看守らをどう見るか
国の腐敗の象徴?
国の財産となるべきものを横取りし、仕事も程々に手を抜くことは国に対する抵抗か。
明英は本当に八百冊もの『清説』を手に入れたのか
八百冊の『清説』が没収されたことは、八百人の色付きが収監されたことを意味するか。
八百という数字は「八百万(やおよろず)」や「八百屋(やおや)」に用いられるように「たくさん」を意味するが……。
清晶と明英の関係性
西方の田舎町で私塾を開いていた清晶と西方出身の明英。
明英は清晶の教え子か。
清晶はなぜ笑ったか
自らの死を受け入れたか。何か企みがあるのか。
そもそも本当に笑っていたのか。
明英に清晶の表情が見えたということは、清晶にも明英の表情が見えたのか。
刑場を潤した赤は何か
小刀で自らの腹を切り裂いた清晶の血か。
女が外套の下に着ていた服の裾か。
この鍵を仕込むために、色付きの色は「赤」にしました。
明英はそれからどうするのか
作中、明英はまだ刀を振り下ろしてはいないが……。
当初は、注印が必要になると嫌だなあ、という思惑で寸止めさせたのですが(まて)、頂いた感想で「清晶を逃がす」とう選択肢を示され、なるほど、と作者は思ったらしい。
他にも鍵はありそうだが…
一番最初に書いた鍵が、この物語の意味を読み解く上で一番重要になる点かもしれません。とりあえず私は、国王=政府とは書かなかったはずですし、国王の立場について考えて頂くために一つ無理矢理エピソードを放り込んだので。もちろん、「国王の決定=政府の決定」と解釈して頂いても差し支えございません。それでも更に「なぜあの国王が?」の問いは残るので。
ただ、国王と政府を繋ぐ等式を否定するならば、物語の悲劇性の場が少し変わって来ることになります。
私が把握している限り、頂いた感想にこの鍵の存在(少なくとも二つの解釈があり得ること)について明示的に述べたものはなく、あまり認識されなかったところのように思われます。どちらの解釈を選ぶかはお好みで。
さて、あなたが見付けていなかった鍵はありましたか?
深読み(又は妄想)が可能な箇所は他にもあると思われます。上に示した鍵の解釈も単なる例に過ぎません。もっと幅広く、もっと深く想像して頂いても結構です。どうぞご自由に!
2011年10月9日