ここち

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Over the Rainbow:いつか輝ける虹の下で

〜日本語対訳版(解説付き)〜
色文字部分は、企画提出時からの修正箇所です。
企画提出時の原文はこちら(企画サイト作品頁直通)。

 

 その朝、僕は目覚まし時計が鳴る前に目を覚ました。旅立ちに備えて既にカーテンを引き剥がしている窓の外はまだ薄暗く、薄もやの漂う空の端が僅かに白んでいるのが見えた。
 二度寝をするのももったいない気がして、僕はしばらく朝の街の景色を眺めた後、着替えを済ませて部屋の電灯を付け、荷造りの済んだ鞄の中からペンとリングノートを取り出した。
 何もない机に向かい、親友のジーンに手紙を書こうと思った。
 過去に何度も書こうとして、その度に、書きかけのまま破り、焼き捨てて来た手紙を。


Dear Gene,
(親愛なるジーンへ)

This is the first letter which I write to you.
(これは僕が君に書く初めての手紙です。)
Today I leave the city for Tokyo.
(今日、僕はこの街を離れて東京へ向かいます。)

It was just two years before that I first met with you. I just moved from Japan with my parents because of my father's work. When I opened the door to welcome our new house first, I was very shocked. Because you were wearing the vivid pink costume of ninja.
(僕は初めて君に会ったのは、ちょうど二年前。僕は、父の仕事の都合で両親とともに日本から引っ越して来たばかりだった。僕が初めて新しい家にお客様を迎え入れるべく扉を開けた時、僕はとても衝撃を受けた。なぜなら、君が鮮やかなピンクの忍者の衣装を着ていたからだ。)

You told me that you visited us to greet the new neighbors, then enthusiastically that you had deeply loved Japanese "anime" and "manga" and specially favored the ninja girl "Momoka" in "The Rainbow Ninja Soldiers" so you are interested in us who are real Japanese.
(君は僕に、自分は新しい御近所さんに挨拶するために訪ねて来たのだと告げ、それから熱心に、君がいかに日本のアニメや漫画を深く愛していて、特に、『The Rainbow Ninja Soldiers』に登場する忍者少女Momokaがお気に入りであること、そして、それゆえ自分が本物の日本人である僕たちにも興味があるのだということを語った。)
You also asked me if your handmade costume is the same as the real ninja in Japanese. When I answered that I don't know because there is no ninja in Japan now, you were deeply disappointed.
(また、君は僕に、自分の手作りの衣装は日本にいる本物の忍者と同じかどうか尋ねた。僕が、今の日本に忍者はいないから分からないと答えると、君はひどく失望していた。)
Honestly, I thought that we had a terrible neighbor at that time.
(正直なところ、僕はこの時、僕らはとんでもない隣人を持ってしまったものだと思った。)

However I soon understood that you were not a bad person after I found you as classmate in my classroom.
(しかしながら、僕は間もなく、君が悪い人間ではないこと理解した。教室で、クラスメートとして君を見つけた後に。)
You spoke to me first of all after the homeroom and offered me your service as my city guide.
(君はホームルームの後、一番に僕に話し掛けて来て、この街の案内役を買って出た。)
After school, we went to the Fisherman's Wharf. We ate clam chowder in a sourdough bread bowl. The chowder was delicious. But the sourdough bread is not. It was too sour and hard although you ate up it--even mine.
(放課後、僕らはフィッシャーマンズ・ワーフへ行った。僕らはサワードウ・ブレッドの器に入ったクラムチャウダーを食べた。チャウダーはおいしかったよ。でも、サワードウ・ブレッドはそうじゃなかった。君は僕の分まで完食してくれたけど、あれは酸っぱ過ぎたし、硬過ぎた。)
After we took a walk around among the tourists, we watched sea lions and heard their barking at Pier 39. You romped around and tried to catch them. I was dazzled by your innocence.
(観光客に紛れてしばらく歩き回った後、僕らはピア39でアシカを見て、彼らが鳴くのを聞いた。君ははしゃいで、アシカたちを捕まえようとした。僕には君の無邪気さが眩しかった。)

We became the best of friends and had a lot of adventures together almost every day.
(僕らは親友になって、毎日のように一緒にたくさんの冒険をした。)
We went to and came back by cycle on the Golden Gate Bridge many times and rushed around in a grove of Buena Vista Park like a ninja. Besides, we tried to sail to the Alcatraz.
(僕らはゴールデン・ゲート・ブリッジを何度も自転車で行ったり来たりしたし、ブエナ・ビスタ・パークの木立の間を忍者のように駆け回った。それから、僕らはアルカトラズ島まで舟で漕ぎ渡ろうともした。)

Do you remember that we bought a lot of chocolates in Ghirardelli in the day before Saint Valentine's Day?
(君は覚えているだろうか、バレンタインデーの前日に、僕らがギラデリでたくさんのチョコレートを買ったことを。)
You planed to invest chocolates in all classmates on the Saint Valentine's Day and expected to gain three times as many as chocolates on March 14th calling "White Day" in Japan although actually you got only one chocolate from me.
(君はバレンタインデーにクラスメート全員にチョコレートを投資する計画を立て、日本ではホワイトデーと呼ばれている3月14日に3倍のチョコレートを獲得することを期待した。実際には、君は僕からたった一つのチョコレートを得ただけだったけれど。)

On the way back from Ghirardelli, we jumped on a cable car crammed with tourists. You had me carry your chocolates in a large paper bag and stood on the narrow step, holding on the pole.
(ギラデリからの帰り道、僕らは観光客でいっぱいのケーブルカーに飛び乗った。君は僕に大きな紙袋に入ったチョコレートを押し付け、ポール(細い柱・てすり)を掴んで狭いステップに立った。)
After the cable car climbed the hill and arrived at the top, you took your one hand off the pole. As the cable car gradually sped up, you leaned out. I feared that you would fall out of the car, and therefore, I dropped some your chocolates.
(ケーブルカーが丘を上って頂上に着いた後、君は片手をポールから離した。ケーブルカーが速度を上げるにつれて、君は車外へ身を乗り出すように体を傾けた。僕は君がケーブルカーから落ちてしまうのではないかと怖れて、そのために、君のチョコレートをいくつか落としてしまった。)

In these two years, I got many wonderful memories with you.
(この二年間、僕は君と一緒にたくさんの素晴らしい思い出を得た。)
But our best adventure is the trip to San Diego. We joined in Comic-Con, wearing ninja costumes which you made.
(しかし、僕らの最高の冒険は、サンディエゴへの旅だ。僕たちは君が作った忍者の衣装を着て、コミコンに参加した。)
The five new friend which you found there were the best teammate. Of cause, you are the supreme.
(そこで君が見つけた五人の新しい友達は、最高の仲間だった。もちろん、一番は君だ。)
The picture which the colorful seven ninja got together and posed as the soldiers is my treasure for life.
(色鮮やかな7人の忍者が集まって戦士のポーズを決めた写真は、僕の一生の宝物だ。)

Our last adventure was climbing Twin Peaks together at night.
(僕らの最後の冒険は、夜中にツイン・ピークスに一緒に登ることだった。)
Although we expected the beautiful night view, we were disappointed in the white at the peak. I have regretted ever that we chose the misty mid-summer day to carry out the plan.
(僕らは美しい夜景を期待していたけれど、僕らは頂上で、真っ白の中で失望した。僕は、その計画を実行するのに霧の多い夏の日を選んだことを未だに後悔している。)
I had thought to tell you a thing on the day if the beautiful scene would appear before us.
(あの日、もし僕らの前に美しい景色が現れていたなら、僕は君にあることを伝えたいと思っていた。)

If you know what I was going to tell you on the day, you might be confused. But...
(僕があの日、君に伝えようとしていたことを知ったなら、君はきっと戸惑うだろう。でも……)

Finally I confess my love to you.
(最後に、僕は君への愛を告白します。)

All my love,
(心からの愛を込めて)
Rin
(リンより)


 手紙を書き上げて、僕はペンを置いた。
 窓の外は既に明るく、夜はすっかり明けている。階下から聞こえた物音で、僕は両親が既に起き出していることを知った。
「倫太郎、そろそろ起きなさぁい!」
 ――ほら、呼ばれた。
 書き上げた手紙を読み返す暇はない。僕はリングノートのページを破り取ると、折り畳んで鞄のポケットにしまった。封筒は、空港の売店で切手と一緒に買えるだろう。

 ――ジーン。僕の最愛の人、ユージーン。
 遠く眺めていたあの大きな輝ける虹の下を、いつか君と並んで歩ける日が来ることを、僕はまだ、夢見ているんだ。

《了》


 

用語解説

the city …ここではサンフランシスコのこと。後述される観光スポットの固有名詞から御推察いただけるはず。なぜ舞台をサンフランシスコにしたかは、作者である私が好きな街だから…だけではない理由が一応あります(後述)。
Gene …男性名であるEugene(ユージーン)の愛称。なお、女性名の「ジーン」は通常Jeanと綴ります。
vivid pink ninja …単にキワモノを狙ったという訳ではなく、ジーンの格好が突拍子もないものであることは作品のテーマ的に必要だと考えていました。
 ピンクには、ジーンを女性と思い込んでくれるかもという期待もありましたが、それだけではなく、女性キャラクターに憧れてそのコスプレをするということは、Geneが男性名だという前提で読むとどういうことになるのか…ということを意識してのものです。
 即ち、単に烈々なファンとしてコスプレを楽しんでいるだけなのか、女装に特別な意義を見出しているのか、もしかしたら性同一性障害で心は女性なのかもしれないし、ちょっとした手違いで男性名を付けられちゃった女の子なのかもしれないし……。これはいずれも全て可能性であり、作者としてどれが正解かということは決めていません。(作者としてのこだわりは「答えは一つではない」ということだけです。)
 また、英語圏でピンクには「同性愛」の意味があると英和辞典に書いてあったので、その辺も意識した上で、様々な可能性を考えるきっかけになるよう「ピンク」を選びました。なお、英語圏ではpinkに関して、日本で「ピンクチラシ」と言われる時のような猥褻な意味はなく、英語圏で猥褻な意味を持つのは、むしろblueのようです。
ninja …主人公とジーンが親しくなるきっかけがほしいと考え、ジーンを自称・日本通として設定しました。ゆえに、ここはsamuraiでもgeishaでも良かったのですが、ジャパニメーションと繋げるならninjaが一番分かりやすいかな、と。
The Rainbow Ninja Soldiers …日本発の(あるいは日本が舞台の)アニメ若しくは漫画(という設定)。たぶん邦題は別にあります(考えていませんが)。海を越えてファンが多い大人気作品……と言うよりは、知る人ぞ知る系である可能性の方が高そうです。(笑)頭の片隅に意識していたのは『NARUTO』ですが(こちらは大人気作ですが)、内容的には戦隊ヒーロー物……あるいは、少女漫画になりますが『美少女戦士セーラームーン』的な感じかなぁと思っていました。あるいは、アメコミですが……『ミュータントタートルズ(ティーンエイジ・ミュータント・ニンジャ・タートルズ)』です!(面白かったよね、あれ…)
Momoka …当初、ジーンのお気に入りキャラクターの名前は「Sakura」でしたが、『NARUTO』のヒロインと被ることに気付いて「Momoka」に変更しました。が、「Sakura」の方が、漢字次第では性別不明の余地をより大きく取れて良かったかもしれない……という気も少ししています(ピンクだから女の子とは限らないのです)。
the Fisherman's Wharf …サンフランシスコ湾岸の観光エリア。大きなカニが描かれた看板で有名。
clam chowder in a sourdough bread bowl …サワードウ・ブレッドと呼ばれる丸いパン(特有の酸味・風味がある)をくり抜いた器に入ったクラムチャウダー(二枚貝を使った具だくさんクリームスープ)。サンフランシスコ名物。湾岸エリアの屋台でも売られている。チャウダーはともかく、一人で完食するにはパンの存在が結構重い。
Pier 39 …ピア39。土産物店やレストランが集まる、ベイエリアでも一番の賑わいを見せる埠頭。この埠頭の脇にはいつも野生のアシカが集まっている。市内有数の観光スポット。
the Golden Gate Bridge …ゴールデン・ゲート・ブリッジ。サンフランシスコと言えば…の大きな赤い橋。
Buena Vista Park …ブエナ・ビスタ・パーク。緑に覆われた小山の公園。都会の中の小さな森。作中の観光名所の中では一番知名度か低いかもしれない(私が半ば迷い込んで行った思い出の場所)。
the Alcatraz …アルカトラズ島。軍事要塞、軍事監獄、ギャングのアル・カポネも収容されていた連邦刑務所を経て、今やサンフランシスコ有数の観光名所(博物館として開放されている)となっている元監獄島。島までの足は有料フェリーを使うのが通常。
the Saint Valentine's Day …日本では女性が男性にチョコレートを贈って愛の告白をする日と思われていますが、欧米では男女を問わず恋人や親しい人に花やケーキ、カードなど(チョコレートに限らない)を贈ります。日本では、バブル景気の名残りのある頃、職場の同僚や上司に「義理チョコ」を贈ることが流行し、義理チョコを貰ってしまった人は「三倍返し」を基本として一ヶ月後のホワイトデー(日本初の記念日)に「お返し」をしなくてはならず、「お返し」の価格が明らかに三倍を下回っていると、「ケチ」と見られて評価が下がるという恐ろしい慣習があったとかなかったとか……という胡散臭い情報をジーンはどこかから仕入れたようです(クラスメートへの投資はジーンが計画したことで、主人公が嘘を吹き込んだわけではない…はず)。
Ghirardelli …サンフランシスコで有名なチョコレートメーカー。同社のチョコレート工場の跡地に建つショッピング・センターのギラデリ・スクエアは観光スポットの一つ。市内に直営店が複数あるほか、市内のスーパーやドラッグストアでも当たり前のようにギラデリのチョコが置いてある。
Comic-Con …コミコン・インターナショナル。アメリカ版コミケ。毎年夏にサンディエゴで開催されている。
seven ninja soldiers …何で七人かと言えば「虹」だからなのですが、日本と異なり、英語圏では虹は6色に分けられるのが通例です。ただ、「the Rainbow Ninja Soldiers」は元々日本のアニメ(マンガ)という設定なので(邦題はたぶん別にある)、七色の虹のイメージでいいかな、と。第七回目の覆面作家企画に出す作品ということも意識していました。
Twin Peaks …ツイン・ピークス。サンフランシスコ市内にある双子の丘。頂上(車で行ける)からは市内が一望できる。夜景の名所としても有名……だが、主人公たちと同様、私がここを訪ねたある日も目の前は真っ白だった。サンフランシスコは霧の街!
confess …「I love you.」ではなく、あえて「告白する」という語を使ったのは、カミングアウトのニュアンスを出すためでした。
Rin/倫太郎 …当初、主人公の名前には特段のこだわりもなく、「Ken/健一」としていた時もありました。その後、お題と掛けて「光(ヒカル)」とすることを考えたのですが、中性的な名前ゆえ、これでは「実は主人公が女の子でした!」というオチが有力になり過ぎると思われたので、これはナシに。漢字の読み方も複数あってややこしいですし(面倒なのでふりがなは振りたくなかった)。
 そこで、愛称の方は中性的で本名の方は男の子らしい印象の名前にしようと考えました(ジーンが本名とは別に愛称で呼ばれているので、主人公についても愛称と本名を用意するのがバランスもいいだろう、と)。それで閃いたのが「Rin/倫太郎」です。漢字は「凛太郎」とすることも考えたのですが、皮肉な思考が働いた結果、倫理の「倫」をあてることに。ただ、主人公の性格的なイメージは「凛」という気もしましたし、「倫」では皮肉過ぎる気もして、ここは未だに迷っているところです……(私が本作の主人公を名前で呼んでいないのも、その辺りを踏まえてのこだわり…です)。
 なお、主人公が同性愛者なのか性同一性障害なのか、あるいは親のネーミングセンスが独特だっただけなのかについては、ジーンと同様、読み手の判断に完全に委ねております。この点を明らかにしない、明らかにする必要がない…ということが、本作(の作者)のスタンスです。
いつか君と並んで歩ける日が来ることを …サンフランシスコはLGBTフレンドリーな街として有名で、毎年6月に最大・最古のLGBTパレードの一つであるサンフランシスコ・プライドが開催されています。本文末尾の「遠く眺めていたあの大きな輝ける虹」はその日市内にはためくレインボー・フラッグのことで、その下を並んで歩くというのはサンフランシスコ・プライドに参加するということを暗示していました。
僕はまだ夢見ているんだ …「早朝に目覚め、起きて手紙を書いたのだけれど、どこかまだ夢を見ているような気分」ということと、「サンフランシスコで過ごした夢のような二年間はまだ終わっていない」ということ、そして、「ジーンと自身との関係について希望を捨てていない」というニュアンスを詰め込んだつもりです。
Over the Rainbow …「虹の彼方へ」。1939年のミュージカル映画『オズの魔法使』でジュディ・ガーランドが歌った劇中歌(聴けばあの歌かと思う人が多いはず)。LGBTの象徴であるレインボー・フラッグはこの歌に着想を得たと言われています。
いつか輝ける虹の下で …英語題の意味は上述のとおりなので、英語をそのまま日本語訳したものではありません。こちらの「虹」は雨上がりの空に架かる虹と言うよりもむしろ、LGBTの象徴としてのレインボー・フラッグのことを意識したものです。
LGBT …〔作品外の用語〕 L=レズビアン、G=ゲイ、B=バイセクシャル、T=トランスジェンダー。最近、国内でも認知度が向上しつつある(と私は思っている)言葉ですが、この四分類では排除されてしまう性的少数者もいると言われています。本作中に込めた「可能性」は、この四分類以外の可能性ももちろん含んでいるつもり、です。
*** ↓用語解説ではないけれど…↓
主人公の性格と背景 …勉強はできる方で、基本的に真面目な(ちょっと冷めた感じの)高校生(という設定)です。日本では色々苦労した…という作中では明示されていない(削られた)設定があります(一応、最後の一文では「サンフランシスコが夢、日本が現実」という感覚を匂わせたつもり…)。
ジーンの性格 …かなり目立つ変わり者です。主人公以外のクラスメートからどう評価されているのかは分かりませんが、少なくともジーン自身は「普通じゃない」ことを全く気にしていないようです。

以下…作者自らちょっと喋り過ぎかもしれない解説

 完全に蛇足であることは承知の上で……。
 できれば一呼吸置いて、本作に対する御自身のお考えをまとめた後にお目通しくださいませ。


 主人公がジーンに惹かれた一番の理由は、ジーンの無邪気さや奔放さにあったのではないかと作者は考えています。
 Comic-Conで出会った仲間たちが主人公にとって最高なのも、彼らが周りの目を気にせずに(世間の枠組みにとらわれずに)、自分の好きなものを無邪気に楽しみ、それぞれの愛を貫いている人々だからで、それゆえに主人公は「一番」の思い出はコミコンと手紙に書き記したのではないか…と。

 そんなわけで、このお話は、一言で言うなら、「社会が、主人公からの信頼を取り戻すまでのお話」です。普通なら「ジーンとの出会いを通じて、主人公が社会に対する信頼を取り戻すまでのお話」と言った方が分かりやすいのでしょうが、私はあえてこれを逆の立場から説明したいと思います。そういう意図で、書きました……。

 私にとって、ジーンは理想であり、希望です。たぶん、主人公にとっても。
 もしかしたら、その存在は理想的過ぎるのかもしれませんが、今、私が書きたいのは「希望の物語」なので……。

この希望を確かな幸福とするために。

2016年3月6日 アヤキリュウ 拝


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