ここち

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郷愁


(1)

あとがき

 2000hitの桐番リクエスト作品。水、夜空、庭の三題噺です。
 「やわらかいイメージ」でも「それとは違うものを期待」というコメントを頂いてしまい、ほのぼのとしたいかにも柔らかい雰囲気の作品は外さねばと思い、当初考えたのは、清らかな水の流れのように美しくも冷たい雰囲気(の和風ファンタジー)でした。それは紆余曲折あってボツになり、そこから生まれた習作が『逢魔が時』です。紆余曲折の経緯は『逢魔が時』のあとがきで語っております。
 で、本作。ひねくれ者の桐生らしく、お題は捻って使いたい! というわけで、冒頭の先輩の台詞となりました。
 最終的に、柔らかいと言えば柔らかい(硬くはない)、しかし、何か違わないか……的ないい塩梅の代物が出来上がりました。リクエストをお寄せくださった匿名希望様のお気に召せばいいのですが……。
 また、3月11日以降、初めて震災に触れる作品となりましたが、特段の意図あってのことではありません。
 私にとって「田舎」(故郷としての)と言ったら東北地方でしょうという感覚がありまして。九州や四国、北海道でも構わないのですが、北海道は北海道の独特の雰囲気があるのと、九州や四国は首都圏よりも関西圏の方が近くて、東京都の関係性においてちょっと印象が弱い。何より、米所としての東北の田園風景が私にとっての「田舎」の代表なのです。ちょうど昨年、仕事の関係で山形と仙台を訪れたこともありまして。
 そうして東北を出すとなると、今の時期、震災に触れないわけにはいかないよなあ、ということで、少しだけ触れてみました。あくまでも、少しだけ。実際にはそんな生温い状況ではないとお叱りを受けそうな気がしつつも、あえてここでは深刻になり過ぎないように主人公と主人公周辺の被災状況は緩和してあります。特に原発事故関係は、この短編で扱い切れるものではないと思われ、回避しております。ご容赦ください。
 そして、本作の最大の悩みはタイトルでした。執筆中のファイル名は「水、夜空、庭。」とお題そのまま。重要モチーフである「満月」を活かして「満月の浮かぶ」だとか、「小さな空には月だけが」だとか、色々凝ったタイトルも考えましたが、ピンと来ず。望月の「望」が入る「望郷」も有力候補になったのですが、ちょっと違うなあ、ということで「郷愁」に。
 シンプル過ぎる気もしますが、短いお話なので、下手にタイトルに凝らない方がいいのかもしれません。

2011年11月22日


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