ここち

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君は風のように


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 しとしとと長雨が降り続く季節になっても、アイツは懲りずに私の家に通い詰めていた。本当にしつこいというか何と言うか、一体何が目的なのか全くもって理解できない。尤も、いつも突然やって来るアイツを追い返すこともせずに家に上げている私も私なのだけれど……。
 その日はとても天気が悪かった。台風の季節にはまだ早かったが、風も強く、窓の外で木の枝が大きくしなっている。強い風のせいで庭のハーブ園が荒らされるのではないかと心配だった。そろそろラベンダーも花開く頃なのだが、雨が続くとせっかくの綺麗な紫色が落ちてしまいかねない。
 ピーンポーン。
 玄関のチャイムが鳴った時、私はいつも通りリビングでハーブティーとハーブ入りクッキーを味わいながら、定期購読しているファッション雑誌を捲っていた。
 その日も両親は留守だった。元々私の両親は家にいることが少ない。父は良くも悪くも仕事至上主義人間で、母は良く言えばアクティブな人だった。その日、父は前日から出張に出ていて、母もそれに合わせて近所の人たちと温泉旅行に出掛けていた。
 私は読み掛けのファッション雑誌を開いたままでひっくり返し、ドアホンに出た。新聞の勧誘や訪問販売なら即刻お断りだが、私にはこんな天気の悪い日にさえ訪ねて来る迷惑な訪問者が誰なのか、ほとんど予想がついていた。
「はい、どちら様ですか?」
 私がドアホンに出ると、予想通りに苛立たしさをもたらす声が飛び込んできた。
「梨菜。オレだよ、祐樹。開けて、開けて。」
 私は何も言わずにガチャンと音を立てて乱暴にドアホンの受話器を戻した。何が「開けて、開けて。」だ。可愛い声を出したって私は騙されないんだから! そう思いながらも、私はまっすぐ玄関へ向かい、すんなり扉を開けていた。
「梨菜。おはよ。」
 扉を開けると、いつも通りのアイドルスマイルを見せるアイツがいた。しかし、今は「おはよう」と言う時間ではない。空を雲が覆っていて太陽の位置は分からないが、時計を見れば既に午後の三時を回っている。
「珍しいって言うよりも、初めてね。あんたがきちんと玄関からやって来たのは。」
 私は嫌味たっぷりに言ってやった。
「うん、今日は天気が悪いから。」
 アイツは笑顔を崩すことなく答えた。
 一瞬、どういうことか分からなかったが、アイツの背後、門の向こうを傘を差した人が歩いて行くのを見て気が付いた。今日のように雨が降っていれば傘がいる。傘を持ったまま庭木を伝って二階の窓によじ登るのは不可能だし、濡れた傘を持ったままリビングから上がるわけにも行かなかった……そんなところだろう。
「傘は右の傘立てに入れてね。」
 私はアイツを中に入れて玄関を閉めた後、そう言った。アイツはきょとんとした顔で首を傾げる。
「あんた……傘は?」
 私はアイツが手ぶらであることに気付いて尋ねた。アイツはにこりと笑うだけだ。
 外は雨。風もかなり強い。しかし、アイツが濡れた様子は全くなく、傘を持っているわけでもなければレインコートもない。
 ふと、外の通りを車の走る音が聞こえた。なるほど、この我がままお坊ちゃまは私の家の前まで車で――いや、私の家の玄関の前まで執事にでも送ってもらったのだろう。
「上がって良い?」
 無邪気に尋ねるアイツに、私はため息混じりに、
「どうぞ。」
 と答えた。玄関を開けてしまった以上「だめ。」と答えるわけにはいかないだろう。玄関先で押し問答とするのも面倒なだけだ。
「適当に座って。」
 私はアイツをリビングに案内すると、キッチンへ向かった。アイツにお茶を用意するためだ。もちろん、ハーブティーではない。アイツの口にハーブティーが合わないことは既に学習済みだ。せっかく大事に育てたハーブで淹れたハーブティーを再び吐き出されてはたまらない。
「紅茶で良い?」
 私はキッチンのカウンター越しにアイツに背を向けたまま言った。
「いいよ。何も要らない。」
 アイツはそう言ったが、せっかくキッチンへ来たのにそのまま、「あ、そうですか。」と戻るのも気が引ける。
「コーヒーとか牛乳もあるけど?」
 私は気を遣って言ったけれど、アイツの答えは素っ気なかった。
「いいよ、要らない。」
 別にアイツに感謝してもらいたいとか、恩を売ろうとか、貸しを作ってやろうとか思っているわけではないけれど、せっかくの親切を無下に断られるのは少しばかり腹立たしい。尤も、アイツが腹立たしい存在であることは今に始まったことではないのだけれど……。
「そう。」
 私は仕方なく、棚から取り出した紅茶の缶を元に戻す。
「ねえ、梨菜。このお茶なあに? またまずい奴?」
 私がリビングへ戻ると、アイツはさっきまで私が座っていた椅子に腰掛けて、私の飲み掛けのハーブティーを覗き込んでいた。「適当に座って。」とは言ったものの、できればリビングのソファーに腰を下ろしてほしかった。私がさっきまで座っていたと明らかに分かる席を奪うなんて、嫌がらせとしか思えない。私は文句を言いたいのを我慢して、アイツの向かいの席に着いた。
「カモミールティーよ。あんたがこないだ吐き出した奴はローズマリーティーだけど、たぶん、これもあんたの口には合わないと思うわ。」
 私はそう言いながら、飲み掛けだったハーブティーを自分の元に引き寄せた。
「ふーん。……おいしい?」
 カモミールティーを口に運ぶ私を見ながら、アイツが尋ねる。
「私にとっては……ね。」
 そう答えながら、私はアイツの目の前にあったファッション雑誌を手に取った。
 適当に相手をしておけば、アイツはすぐに飽きて帰ってくれる。本心を言えば、「帰って欲しい」わけではなかったけれど、アイツと楽しく歓談するつもりもなかった。私にとって、少なくとも今の笠原祐樹はそういう相手ではないのだ。
「今日もお母さんやお父さんは留守?」
 アイツはリビングの中をきょろきょろと見回しながら言った。
「そうよ。パパもママも自分中心の人だから。娘の私は放ったらかし。でも、そのおかげで私はのんびりできるから良いけどね。家にいられる方がむしろ迷惑だから。」
 私はそう言いながらカモミールティーを一口飲んだ。はっきり言って、私は両親のことをあまり快く思っていない。特別嫌いというわけではないが、ちょっとした反抗期という奴だ。自分で反抗期だと自覚しているなんて少し変だとは思うのだけれど……。
「そんなこと言ったらダメだよ。」
 アイツは私を嗜めるように少し厳しい口調で言った。
「何も知らない他人が偉そうに言わないでよ。」
 私はむっとして言い返した。
「でも、梨菜の親はお父さんとお母さんのたった二人しかいないんだよ。梨菜にとって大事な人でしょ? いなくなってから後悔しても遅いんだよ。」
 アイツは瞳が揺れていた。アイツの潤んだ瞳に私はあることを思い出して、自分の言った言葉を後悔した。アイツの母親はアイツが小学生の時に亡くなっているのだ。アイツが私のセリフに過剰反応したのも、きっとそのせいに違いない。
「ごめん。あんたのお母さん、亡くなってたんだよね。」
 私は俯きがちに言った。
「良いよ。もう六年も前のことだから。梨菜は梨菜のお母さんのこと、大事にしてね。」
 アイツはにっこりと笑った。嫌味のない、小学生時代の笠原祐樹と同じ、優しくて悲しそうな笑顔だった。
 アイツの母親が亡くなったのは確か小学六年生の夏のことだ。元々身体が弱くて、アイツが小学校三年生になるまでは病院に入院していたと聞いている。
 授業参観の後に、私が初めてアイツから母親を紹介してもらった時、彼女は退院したばかりだったのだろう。とても綺麗な人だってけれど、儚く消えてしまいそうなほどに肌が白かった。
 あの日、教室に母親の姿を見つけた後、アイツは嬉しそうに私に母親を紹介してくれた。彼女はとても気さくで優しい人だった。
「梨菜ちゃんのようなお友達ができて、やっぱりこの学校にして良かったわ。」
 彼女はそう言って笑った。笠原コーポレーションの御曹司であるアイツをこんな普通の公立小学校に入れたのも、彼女の強い希望があってのことらしい。
「気取らないでのびのびと元気良く遊んで欲しいかったから……。」
 そんな風にアイツの母親が他の保護者と話しているのを耳にしたこともあった。アイツが小学校で元気良く遊んでいたかどうかは少々疑問だが、少なくとも今の自由奔放なアイツは母親の願い通りかもしれない。多少行き過ぎの気もするし、アイツが変わったのは母親が希望した公立の小学校を卒業して、私立の学校に通うようになってからのようだけれど……。
 私も、アイツの母親のことは好きだったから、彼女が亡くなったことはショックだった。そう何度も会っていたわけではないけれど、彼女は自宅を訪ねた私に毎回ハーブティーをご馳走してくれて、私が焼くハーブ入りクッキーも元々は彼女に教えてもらったレシピだ。その後色々なハーブで試してレパートリーは増えたけれど、それでもまだ彼女のレベルには程遠いのだろう。
 本当に数回会っただけの私でさえ彼女が亡くなったという知らせに涙を零したのだから、彼女を最も慕っていたに違いないアイツにはとてつもなく大きな衝撃だったに違いない。
 母親が亡くなった後、アイツは数日学校を休み、学校に来るようになってからもしばらくは存在を忘れそうなほどに大人しかった。学年が上がるに連れて他のクラスメートとも馴染み、明るく笑うことが増えていたのに、母親を亡くしてからはずっとぼんやりしていた。アイツが人前で涙を流すことはなかったけれど、それが余計に苦しかった。クラスメートの励ましにアイツは悲しそうな笑顔を返していて、結局、私はアイツに声を掛けることができなかった。
 結局、卒業式までアイツは落ち込んだままだったような気がする。卒業式の後、「元気でね。」と声を掛けた私に、アイツは微かに笑みを見せて頷いた。その時、私はアイツの笑顔の中に見つけた寂しさに戸惑って、ろくに話もせずにその場を離れてしまった。あの寂しさは単にクラスメートと離れ離れになってしまう寂しさではなかったのだと思う。母親を亡くした時の寂しさをまだ引きずっていたのか、それとも何か別の理由があるのか、その時の私には分からなかった。今だって、分かりはしない。
 アイツが小学校を卒業した後、私立の中学校へ進学したのは、公立の学校を希望していた母親が亡くなったからかもしれない。もし、彼女が小学校六年生の時に亡くなっていなかったら、アイツは公立の中学校へ進学したのだろうか。そもそも、アイツ自身はどちらの学校を希望していたのだろう。そう言えば、私はアイツが小学校を卒業した後どうしていたのか、全く聞いていなかった。
「ねえ、何読んでるの?」
 アイツは身を乗り出して、私がテーブルに広げていたファッション雑誌を覗いて来た。
「雑誌。」
 私は極めて簡明に答えた。
「ふーん。」
 アイツはしばらくの間、私が捲る雑誌を興味深そうに眺めていたが、突然、何かを思い出したようににこりと笑った。
「そう言えば、梨菜はファッションデザイナーになりたいんだよね。もしかして、そのために勉強してるの?」
 驚いた。確かにファッションデザイナーになりたいという夢はあった。しかし、それを誰かに語った記憶はない。
「な、何であんたがそんなこと知ってるのよ!」
 私が思わず声を上げると、アイツは声を上げて笑った。
「だって、梨菜、小学校の卒業アルバムに書いてたよ。将来の夢はファッションデザイナーだって。」
 確かに、言われてみれば、そんなことを書いた記憶がある。しかし、本人さえ半分忘れているようなことをよく覚えているものだ。小学校時代の話ではあるが、テストで百点ばかり取っていたのには、この記憶力の良さもあるのかもしれない。
「た、確かに小学校の時はそう書いたかもしれないけど、今の私の夢はファッションデザイナーじゃないから。」
 私は雑誌に視線を落としながら言った。
「何で?」
 アイツはきょとんとして聞き返して来る。
「何でって……別に何でも良いでしょ。あんたには関係ないんだから。」
 私はそう言って、開いていたファッション雑誌を閉じた。
「それ、見ても良い?」
 アイツは私が閉じたファッション雑誌を指差して言う。
「勝手にすれば?」
 私はファッション雑誌をアイツへ押し付け、ハーブ入りクッキーに手を伸ばした。アイツはファッション雑誌を自分の下に引き寄せて順番にページを捲り始める。女性向けのファッション雑誌なんか見て面白いのだろうか。私は再びカモミールティーに口をつけた。
 かつて、私の夢は確かにアイツの言う通り、ファッションデザイナーだった。小学生の頃にテレビで見たファッションショーに憧れて、私もあんな服が作りたいと思った。どういうわけか、ファッションショーに出演するモデルになりたいとは思わなかった。その頃から、自分がモデル向きでないことを自覚していたのかもしれない。
 本当のことを言えば、私は今でもファッションデザイナーという職業に憧れている。でも、私には才能がない。チャンスもない。この不景気の日本では――いや、たとえ日本の景気が良かったとしても、ファッションデザイナーなんて職業はそう簡単には成立しない。真面目に勉強して大学を出て、公務員になった方が収入も安定するし、よっぽど得なのだ。尤も、この不景気で同じようなことを考えている人間が多いのは百も承知だけれど……。
「梨菜。」
 しばらくの間、黙って私のファッション雑誌を捲っていたアイツが突然顔を上げて声を掛けて来た。
「何?」
「この服、可愛いと思わない? 梨菜に似合うと思うんだけど……。」
 そう言ってアイツはファッション雑誌を立てて私に見せた。アイツが示したその右側のページには、ピンク色のワンピースを着たモデルが大きく写っている。
「そう? 胸のリボンは赤じゃなくてオレンジにすべきだと思うけど。」
 私が言うと、
「うん、オレもそう思う。このワンピースをデザインした人よりも、梨菜の方がセンスが良いね。」
 そう言ってアイツは笑った。何となくアイツの意図していることが分かり、私はムッとしながらアイツに念を押した。
「何度も言うようだけど、私はファッションデザイナーはもうとっくに諦めてるんだからね。」
 カモミールティーで口の中のクッキーを喉の奥へと押し流し、私は手持ち無沙汰に再びクッキーへ手を伸ばした。
 そう、ファッションデザイナーなんて叶わない夢は諦めて、私は堅実に公務員になるのだ。そうすれば、休みの日には今まで通りハーブを楽しむこともできる。
「もったいないよ。こんなに綺麗な服、デザインできるのに……。」
 アイツの言葉に私が顔を上げると、アイツは私が雑誌に挟んでいたスケッチを見つけ出していた。すぐに取り返そうかとも思ったが、ここでむきになっては逆効果だ。相手のペースに巻き込まれては失敗するのは由美を相手に何度か経験している。
「大したことないわよ。そんなのただの暇つぶし。」
 私はあえて何でもない風に言った。
 アイツが見つけたスケッチは、私が午前中に書き殴っていたものだ。服のデザインを考えている時は本当に楽しい。ハーブを育てている時と同じくらい。でも、私は裁縫が得意ではない。いや、得意不得意を言う以前に、私がまともに裁縫をしたのは学校の家庭科の授業の時くらいなのだ。服のデザインを絵に描いたことなら何度もあるが、実際に服を作ったことは一度もない。本気でファッションデザイナーを目指している人たちは、専門学校に通うにしても独学にしても、自分で実際に服を作って、きちんと経験を積み、服の作り方を勉強しているはずだ。デザインの勉強も自分の感性が頼みの私よりずっと本格的に進めているのだろう。今更私が本気でファッションデザイナーを目指したところで、そんな彼らに追いつけるとは思えなかった。
「そうかな。オレ、この雑誌に載ってるどの服よりも、梨菜のデザインしたこの服の方が好きだな。」
 そう言ってアイツは微笑んだ。私に再びファッションデザイナーを目指すように言いたいのだろうが、今更無理なのだ。私自身、高校卒業後の進路はもう決めている。
「だったら自分で型紙を起こして作ってみたら? 似合うんじゃない?」
 私は冗談半分に言ってやった。もちろん、私が描いた服のデザインは女性用である。
「そっか、似合うかな。でも、オレ、裁縫出来ないからなぁ。うーん。」
 アイツは私の嫌味に気付いていないのか、真剣に考え込み始めた。
「ばかじゃないの。似合うわけないでしょ、女物なんだから。」
 私は呆れながら言って席を立ち、テーブルの上のティーポットとティーカップを取ってキッチンに向かった。最初にいれたカモミールティーを飲み切ってしまったから、ポットにお湯を注いでもう一杯飲もうと思ったのだ。
「じゃあ、梨菜が着れば良いよ。作りなよ。」
 アイツはしつこく言って来る。
「簡単に言わないでよ。生地だって揃えなきゃいけないし、お金も掛かるの。それに私だって裁縫は得意じゃないんだから。」
 私は乾燥したカモミールの花を缶から取り出して少しティーポットに足した。今はカモミールの収穫期ではないため、残念ながらドライハーブしかない。フレッシュの方が香りは断然良いのだけれど……。キッチンカウンターの脇に置かれた電気ポットからティーポットにお湯を注いだ。普段はヤカンで沸かしたお湯を使うが、今から一々お湯を沸かす気はしなかった。新たに足したカモミールの花の成分がきちんと抽出されるまで、私はしばらくその場で待った。
「梨菜。」
 しばらくの間、何か考えるようにして黙っていた祐樹が私に声を掛けた。
「何よ?」
 アイツの声に、私は振り返らずに応じた。そろそろ良い頃だ。私はティーポットからティーカップにゆっくりとカモミールティーを注いだ。白い湯気が立ち、リンゴに似た甘いカモミールの香りを運ぶ。
「梨菜ならなれるよ、ファッションデザイナー。」
 アイツが言った。
「だから、私は!」
 私が振り返ると、アイツは既にリビングの扉の所にいて、
「また来るから。」
 と笑顔で言い残してさっさと帰って行った。パタンとリビングの扉が閉まると同時に、生温い風がリビングの中に入って来る。
 私は小さく息を吐き、カモミールティーを注いだティーカップを持ってリビングに戻った。テーブルの上には、広げられたままのファッション雑誌と私が描いた「ただの暇つぶし」があった。
「何で今更そんなこと言うのよ。」
 私はデザイン画を間に挟み、ファッション雑誌を閉じた。ふと雨音が大きくなったような気がして、私は窓の外に目をやった。風も強くなっているのか庭木が揺れている。
 そう言えば、アイツは傘を持っていなかった。迎えも呼ばず、いきなり帰って行ったが平気だったのだろうか。
(風邪……引いてないと良いけど。)
 この梅雨の長雨は、まだ当分続きそうだった。

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