モンブラン通りのスウィートハート
執筆後記
四百字詰換算50枚前後の短編として仕上げるつもりで書き始めたのこ作品、気が付けば予定の三倍の量になっておりました。危うく長編になるところです。
後半、栗山さんが経ってからの話は冗長になってしまうかもしれないと思いながら書いたのですが、ラストへの繋ぎとして最低限を入れておきました。五年間のもろもろはそれぞれご自由に想像して頂ければと思います。
量が増えれば完成までの執筆時間も増えて、これまた予定の二倍となってしまいましたが、長い付き合いで登場人物への愛着も生まれてきました。
主人公の名前も当初はかなりいい加減に付けたのですが、今となってはこれしかないと思える名前です。智子の名前が昔書いた別の短編(未公開)の登場人物と同じになっているような気がするのもご愛嬌です。
智子や美咲さんについては本編中で書ききれない裏設定もいくつかあり、番外編を書きたいとも思っています。本編は、当初の構想だった「ケーキ店へ通い詰める女の子の話」として書いていたために、十分に表現し切れなかった栗山さんの心理についても併せて触れたいところです。
シリーズ化を目論んでもいますが、他に書きたい新作もあるので、様子を見つつ、気が向いたらといったところでしょうか。
書き進めるうちにテーマらしきものも出てきたのですが、そのテーマのために分かりにくくなった箇所もあるかもしれません。なんとなくでも書こうとしたことが伝わればいいなあと思います。
それから、タイトルの「モンブラン通り」が作中に微塵も出てきませんが、これはタイトルを先に決めてしまったゆえの些細なアクシデントです。本当に最初の頃は、ケーキ店のある通りが「モンブラン通り」と呼ばれている予定だったのですが、現代日本ではまずありえない名称でした。一時は外国や町興し中の商店街を舞台にして「モンブラン通り」を生かすことも考えたのですが、気が付けば舞台は閑静な住宅街に。それでもタイトルを変えなかったのは、このタイトルの語感をとても気に入っているからなのです。
もちろん、タイトルのスウィートハート(sweet-heart)は……のことです。
2005年12月29日